Jポップの日本語

流行歌の歌詞について

2020-01-01から1年間の記事一覧

YOASOBI 「夜に駆ける」逐語解読

0 「夜に駆ける」は、公式のミュージックビデオは歌声が無機質な感じで親しみがわきにくいが、「THE HOME TAKE」バージョンの方はテンポを落としており、ボーカルも演歌ふうなところがあり(実際は洋楽に親しんでいる)、哀愁が増している。ikuraの外見も黒…

若い性はどう描かれたか

1 ABCソング 〈ABCは知ってても それだけじゃ困ります アルファベットのその次は 旺文社カセットLL〉という学習機器の販促コマーショルが、私が小学生の頃(一九七〇年代)流れていた。中学生になると、この〈ABCは知ってても それだけじゃ困りま…

尾崎豊「虹」の読書会

尾崎豊の「虹」(作詞、尾崎豊、1990年)はCD2枚組アルバム『誕生』に収録された歌である。最初に聞いたときはアルバムの埋め草のような退屈な歌だなと思ったが、ライブビデオでじっくり歌う姿を見ているうちにスルメを噛むような味がある歌だなと思った。…

Official髭男dism「Pretender」V.S.King Gnu「白日」 勝つのはどっちだ!

さあ、今ここに前代未聞の白熱バトル、「Official髭男dism 対 King Gnu(King Gnu)」の一大決戦が幕を開けようとしています! 絶大なる人気をほこるビッグネームどうし、その優劣を競い合うというから聞き捨てなりません。 登場するのはお互いのファンを自…

ビスケットはなぜ増えるのか~まど・みちお「ふしぎなポケット」

1 まど・みちおが作詞した童謡で誰もが知るのは、「やぎさんゆうびん」(1939年)、「ぞうさん」(1951年)、「ふしぎなポケット」(1954年)の3つであろう。ここに「一年生になったら」(1966年)を加えて4つにしてもよい。 岩波文庫版『まど・みちお詩集…

瑛人「香水」入門~復縁ソングの現在

1 □ 瑛太の「香水」がYouTubeで再生回数1億超えたって ■ 瑛人ね □ 紛らわしいから苗字を略さないで欲しいんだけど ■ 逆に瑛太が今年から芸名を本名の永山瑛太にしたよ □ 瑛人って2世タレントとかなのか? それで苗字を隠してるとか ■ 違う。芸能界に縁のな…

ボインとおっぱい

1 新アルバム発売でテレビによく出ているあいみょんだが、先日の『SONGS』(NHK R2.9.5放送)で、「“いちゃいちゃ”って言葉を考えた人すごい」と言っていた。正確には、数年前にツイッターで呟いたことらしい。 擬音語の造語力について「そういう言葉を一番…

歌詞がねじれてますが、何か?

0 歌詞を詩のように本に印刷したとすれば、たいていのものは、縦書きなら見開き二ページ、横書きなら一ページに収まってしまうだろう。言語の作品としてみた場合、それほど短いものである。 だがその短さであっても、なぜか途中で言っていることが変わってし…

ホステス探しもの−−尋ね人ソング

0 水商売の女性を歌った歌は多いが、今回はその中でも、ある分野に絞って考察してみたい。 「ホステス探しもの」とでも呼ぶべき種類の歌がある。水商売の女性に惚れてその人が店を変えるあとを追いかけたり、あるいは水商売に「身を落とした」知り合いの女性…

逃げることはかっこいい−−ラナウェイソング

0 一九七九年から一九八〇年にかけて、〈ラナウェイ〉と歌う歌がいくつかあった。 最初はクリスタルキング「大都会」(作詞、田中昌之、一九七九年)で、ハイトーンボイスが珍しがられて大ヒット。〈Run Away Run Away 今 駆けてゆく〉と歌われた。次がシャ…

女が歌う男の「生き方」

0 感傷的な歌詞の中にふと〈生き方〉という言葉が挟まれると、そこだけすっと背筋が伸びた感じになる。歌詞が引き締まる。〈生き方〉という言葉が、文脈からはずれて不意に出てきたときは軽い驚きを生む。私にとってそういう感じにさせる歌は二つある。 1-1 …

浜崎あゆみの技法

以下は20年前に書いた原稿。 歌詞をこま切れにする 二〇〇二年一月一日発売のアルバム『I am...』までで浜崎あゆみが作詞した歌は六〇曲近くになる。その全てに目を通すと、よく似た言葉が何回も使用されていることがわかる。語や句のレベルばかりでなく、…

浜崎あゆみ~共感はどこまで可能か

浜崎あゆみの自伝的ドラマ『M』が今夜、テレビ朝日で放送される。 以下は20年前に書いた原稿。 庶民と貴族 二〇〇一年三月二八日、浜崎あゆみと宇多田ヒカルの大物二人が同日にアルバムを発売した。この平成の歌姫決戦とも言われた戦争での勝者は宇多田ヒカ…

「竈門炭治郎のうた」にみる運命論

1 『鬼滅の刃』アニメ版は、非常に手をかけて緻密に作られた作品で、特に「第19話」はシリーズの中で一番盛り上がるように作られている。 映像的に称賛されている回であるが、激闘シーンが最終局面に差しかかったところで流れる「竈門炭治郎のうた」は強い印…

志村けんと「東村山音頭」

1 「東村山」の中には志村の名前が隠されている。〈ひがしむらやま~〉と歌うとき、志村は自分の名前を呼んでいることになる。 この歌が流行ったとき私は小学六年生だったが、東村山がどこにあるのか知らなかったし、架空の地名なのかもしれないと思っていた…

比喩一発ソング

カラオケでよく歌われる歌の一つに中島みゆきの「糸」(作詞、中島みゆき、一九九二年)がある。しんみりした歌で七〇年代っぽい感じがするが、その素朴さゆえに人気がある。カバーするアーティストも多く、映画化もされ、まもなく公開される。 普通、歌で「…

野口五郎vs.松本隆

1-1 野口五郎の時代というのが確かにあった。私にとってそれは、「むさし野詩人」「沈黙」「季節風」「風の駅」がリリースされた一九七七年である。その頃は中学一、二年の多感な時期で、野口五郎の歌はお子様が聞いてもいいアイドル歌謡のはずなのに、歌詞…

謎解き「山口さんちのツトム君」

0 フォークシンガーみなみらんぼうが作詞作曲した「山口さんちのツトム君」はNHK「みんなのうた」で流れて大ヒットした。一九七六年のことである。いろんな歌手がレコードを出しており、売上累計は一五〇万枚だという。(https://www.news-postseven.com/…

アニメソング(ロボットアニメ編)

0 ネットフリックスで『機動戦士ガンダム』を通して見直した。もう2,3回見ているはずだが、「あれ?こんな話だったっけ?」と思うところが多々あった。Gアーマーが結構活躍していたり、後半はジオンはモビルスーツよりモビルアーマーが主体になったりとか…

自殺ソング

0 日本での自殺者数は年齢別で五、六〇代をピークに上昇してゆく。大人が自殺するのは、病気を苦にしたりリストラされて仕事がないといった経済的な理由であることが多い。中高生の場合は、いじめなど学校での人間関係や、虐待など家庭での親子関係に問題が…