25年ほど前に書かれた短歌だが、今ふうにも解釈できる内容である。SNSでクソリプに腹を立てて、つい返信してしまいそうになるとき、「こんなアホを相手にしてもしょうがない」と、「振り上げた握りこぶし」を振り下ろすのをやめるときの心境とそっくりである…
1 日本でカラー放送が開始されたのは1960年からだが、当初はカラーテレビじたいが少なく、カラーで撮影された番組も少なかった。NHK総合テレビの全番組がカラー化されたのは1971年である(「NHK放送博物館」)。71年時点のカラーテレビ普及率は42.3%、…
庵野秀明の『シン・ゴジラ』とか『シン・ウルトラマン』といった『シン』のシリーズは、原点に還って、そこから新たなものを生み出すということが共通している。「ゴジラ」はそもそもどういう怪物なのか。「ウルトラマン」はそもそもどういう存在なのか。発…
3月に公開を控える『シン・仮面ライダー』。庵野秀明による『シン~』というリブートのシリーズは、原点に還るというシンプルな手法で想像力を起動させようとしている。 「原点に還る」といっても、様々なレベルの切り口がある。『シン・仮面ライダー』の場…
1970年代、ヒット曲の作詞は阿久悠の名で埋め尽くされていた。 阿久悠は、演歌やアイドル歌謡はもちろんのこと、「ピンポンパン体操」などの子ども向けの歌、「宇宙戦艦ヤマト」などのアニメ、「ウルトラマンタロウ」などの特撮も作詞している。 阿久悠が作…
『帰ってきたウルトラマン』の謎というと、多くの人は、初代のウルトラマンとは別のウルトラマンなのだから、「帰ってきた」というのはおかしいではないかと思うだろう。定番の疑問である。 これについてはすでに答えが出ている。もともと『ウルトラマン』の…
福山雅治主演の映画『沈黙のパレード』を見た。 エンドロールとともに流れてきた主題歌「ヒトツボシ」が印象的だったので、それについて書いてみる。 1 映画 1-1 まずは映画の感想である。 はじめの20分くらいは、長い歳月を隔てた二つの殺人事件と、幾…
都内某大学、文学部国文学科、仲良し女子大生2人のお昼休みの会話 つむぎ あたしお花屋さんでバイトはじめたの。それでそのお店でよく流しているBGMがSMAPの「世界に一つだけの花」(作詞、槇原敬之、2002年)なんだよね アオイ うわ。〈花屋の店先に並んだ…
1-1 ここ数年、吃音に関する一般向けの本が立て続けに出て、しかも話題になった。『どもる体』(伊藤亜紗、医学書院、2018年)、『吃音:伝えられないもどかしさ』(近藤雄生、新潮社、2019年)、『吃音の世界』(菊池良和、光文社新書、2019年)などがそ…
1 私が大学生だった頃はバブル景気真っ只中の東京で、吉祥寺や世田谷に住んでいたが、いずれも大家さんの自宅の一部を改造したような安アパートで、四畳半で風呂なし、共同便所で家賃3万円だった。 予備校時代はバブル直前の時期で立川に住んでいた。駅南…
9-1 父■〈僕〉と〈あなた〉はセットで出てきても存在論的に対等ではないことがある。ちょっと時間をさかのぼることになるけど、僕が生まれた1967年に佐良(さがら)直美という人がデビューして、「世界は二人のために」(作詞、山上路夫)という歌が大ヒ…
娘□これまで読んできたフォークとかニューミュージックとか「ルビーの指環」とかって4,50年も前の歌でしょ。最近の歌では人称代名詞はどうなっているのかな。このところ、Uru「あなたがいることで」(作詞、Uru、2020年)が好きでよく聞くんだけど。 Uru…
7-1 松本隆は人称代名詞を使いたくない 娘□松本隆は人称代名詞を好まないって話をちょこっとしたでしょ。それが気になってるんだけど。 父■ああ、「詩人派」のところね。「君が」とか「僕は」だったら、まだ3文字3拍で済むけど、「わたしの」「あなたは…
6-1 父■オフコースを解散してソロになった小田和正は特大ヒットを放った。それが「ラブ・ストーリーは突然に」(作詞、小田和正、1991年)。 小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」歌詞→ https://j-lyric.net/artist/a04a641/l00330a.html 娘□タイトルの…
0 武田鉄矢の二つの貌 「Jポップの日本語」と題しながら、70年代フォークに言及することがよくあるので、この際、「フォークソングの日本語」と括りなおして書いてみることにした。 なぜ「70年代フォークに言及することがよくあ」ったのかというと、フ…
5−1「YES-YES-YES」 娘□オフコースの他の歌はどうなのかな? 父■じゃあ僕が好きなところで「YES-YES-YES」(作詞、小田和正、1982年)。間奏でクラクションの効果音が入るのが洒落ていていいんだよね。きれいにまとまっているだけでは物足りないと思ったの…
4−1 父■オフコースを紹介するつもりが、だいぶ回り道をしてしまった。 娘□えー、今のは回り道だったんだ。 父■オフコースで一番ヒットしたのが1979年の「さよなら」(作詞、小田和正)。12月に発売されて、歌詞の内容と季節がマッチしていたのもよかった…
父■「あなたと私」の歌詞に話を戻すよ。フォークでもうひとりというか、グループなんだけど、取り上げたい人がいて、オフコース。小田和正がいたグループだって言えばわかるかな。デビューしたのは1970年だけど、テレビにも出なかったせいか、なかなかヒット…
(概要)歌詞に3回出てくる〈小さい〉という言葉は、個々人の人生における無力さを表している。ピエロは利他行で人を救うとともに自分も救われることを望んでいる。 1 位置づけ 「道化師のソネット」は、さだまさしの人気がピークを迎えていた1980年に発表…
2−1 父■〈貴方は貴方の道を 歩いてほしい〉というのは、言い方を変えれば、「あなたはあなたのままでいてほしい」ということになる。 娘□「あなたはあなたのままでいてほしい」と言われても、自分をはっきり持っている人はいいけど、ほとんどの人はそう言…
1−1 父■このあいだ松山千春「銀の雨」(作詞、松山千春、1977年)を久しぶりに聞いたんだ。なんかカッコいい歌だなと思った。でも歌詞を読んだら「ん?」ってなった。 娘□松山千春ってスキンヘッドでサングラスかけた強面(こわもて)の人でしょ。話はおも…
娘□あのさぁ、ちょっと協力してほしいことがあるんだけど。 父■なに? 娘□大学の社会学の講義で、課題にレポート出されたんだよねー。 父■ふーん。 娘□なんか社会学の有名な先生で、流行歌を読み解いている本があるんだけど、それみたいに最近の流行歌を分析…
「この歌が君に届くように」とか「僕は歌い続けている」のように、歌のなかで、その歌自身を指示しているものを自己言及ソングと呼ぶことにする。今歌っている歌のことを題材にしている歌である。 こういう歌は、一つのジャンルを形成するほどたくさんある。…
1 あいみょんの「マリーゴールド」を聞くと、2年前のあの暑い夏を思い出す・・・てな具合に感傷にふけることができる歌は、年を取るほど少なくなっていきます。新鮮な経験というものがなくなりますから、経験に結びつく歌もなくなるのです。でも2年前の夏…
1 正面を避けること 風変わりなものでも、いつも見ていればそのうち見慣れて、おかしさを感じなくなる。矢吹丈(ジョー)の前髪もそのひとつである。 まずは彼がどんな髪型だったのかを見ておこう。こちらである。 ジョーの髪型の特徴は2つある。 a.髪が全…
1. アイドルたちの口ポカン~聖子と明菜を中心に 1-1 主流と傍流 YouTubeを見ていたら中森明菜のデビュー当時の動画がありまして、ずんぐりした体とあどけない顔で〈駆けるシェパード〉とか歌っているわけです。16歳のときで、来生(きすぎ)えつこ、たかお…
ラララのアトム、ルルルのジョー(その2)ジョー編 1 『あしたのジョー』の時代と人びと 1-1 『あしたのジョー』の時代 「鉄腕アトム」を作詞した谷川俊太郎と若い頃から親交があった寺山修司の「あしたのジョー」について次に取り上げよう。文化人作詞シリ…
谷川俊太郎が書いた「鉄腕アトム」の歌詞 谷川俊太郎の詩のアンソロジー『いつかどこかで 子どもの詩ベスト147』(集英社文庫、2021年)収録作品中、一番ページ数をとっているのが「みみをすます」(1982年)である。長さもそうだが、質からいっても本作がこ…
夕飯の準備をする妻は、鍋の蓋を開けたり閉めたり、まな板で包丁をトントンしたり、右に左にボクサーのようにキュッキュッと忙しなく動いている。 私はテーブルで、コンビニの安物ワインを手酌でグラスに注いで飲んでいる。ツマミはスーパーの惣菜で買ってき…
某市、某中学校で保護者面談がおこなわれた。 「先生、最近うちの娘と全然会話にならないんです。何を言っても「うっせぇうっせぇ」で、取り付く島がないんです。しかも妙なフシがついてるんです。前はこんなんじゃなかったのに。ほんと素直で良い子だったん…