Jポップの日本語

流行歌の歌詞について

2021-01-01から1年間の記事一覧

さだまさし「道化師のソネット」を読む〜ピエロの菩薩行

(概要)歌詞に3回出てくる〈小さい〉という言葉は、個々人の人生における無力さを表している。ピエロは利他行で人を救うとともに自分も救われることを望んでいる。 1 位置づけ 「道化師のソネット」は、さだまさしの人気がピークを迎えていた1980年に発表…

伊勢正三「22才の別れ」、荒井由実「卒業写真」、菊池桃子「卒業」〜君僕ソング(その2)

2−1 父■〈貴方は貴方の道を 歩いてほしい〉というのは、言い方を変えれば、「あなたはあなたのままでいてほしい」ということになる。 娘□「あなたはあなたのままでいてほしい」と言われても、自分をはっきり持っている人はいいけど、ほとんどの人はそう言…

松山千春「銀の雨」「旅立ち」〜君僕ソング(その1)

1−1 父■このあいだ松山千春「銀の雨」(作詞、松山千春、1977年)を久しぶりに聞いたんだ。なんかカッコいい歌だなと思った。でも歌詞を読んだら「ん?」ってなった。 娘□松山千春ってスキンヘッドでサングラスかけた強面(こわもて)の人でしょ。話はおも…

「イエスタデイ」と「大きな栗の木の下で」~君僕ソング(前口上)

娘□あのさぁ、ちょっと協力してほしいことがあるんだけど。 父■なに? 娘□大学の社会学の講義で、課題にレポート出されたんだよねー。 父■ふーん。 娘□なんか社会学の有名な先生で、流行歌を読み解いている本があるんだけど、それみたいに最近の流行歌を分析…

自己言及ソング

「この歌が君に届くように」とか「僕は歌い続けている」のように、歌のなかで、その歌自身を指示しているものを自己言及ソングと呼ぶことにする。今歌っている歌のことを題材にしている歌である。 こういう歌は、一つのジャンルを形成するほどたくさんある。…

あいみょんと「若者ことば」

1 あいみょんの「マリーゴールド」を聞くと、2年前のあの暑い夏を思い出す・・・てな具合に感傷にふけることができる歌は、年を取るほど少なくなっていきます。新鮮な経験というものがなくなりますから、経験に結びつく歌もなくなるのです。でも2年前の夏…

『あしたのジョー』前髪の進化論

1 正面を避けること 風変わりなものでも、いつも見ていればそのうち見慣れて、おかしさを感じなくなる。矢吹丈(ジョー)の前髪もそのひとつである。 まずは彼がどんな髪型だったのかを見ておこう。こちらである。 ジョーの髪型の特徴は2つある。 a.髪が全…

中森明菜と80年代アイドルたちの口唇期

1. アイドルたちの口ポカン~聖子と明菜を中心に 1-1 主流と傍流 YouTubeを見ていたら中森明菜のデビュー当時の動画がありまして、ずんぐりした体とあどけない顔で〈駆けるシェパード〉とか歌っているわけです。16歳のときで、来生(きすぎ)えつこ、たかお…

寺山修司の「あしたのジョー」

ラララのアトム、ルルルのジョー(その2)ジョー編 1 『あしたのジョー』の時代と人びと 1-1 『あしたのジョー』の時代 「鉄腕アトム」を作詞した谷川俊太郎と若い頃から親交があった寺山修司の「あしたのジョー」について次に取り上げよう。文化人作詞シリ…

ラララのアトム、ルルルのジョー(その1)アトム編

谷川俊太郎が書いた「鉄腕アトム」の歌詞 谷川俊太郎の詩のアンソロジー『いつかどこかで 子どもの詩ベスト147』(集英社文庫、2021年)収録作品中、一番ページ数をとっているのが「みみをすます」(1982年)である。長さもそうだが、質からいっても本作がこ…

唱歌「故郷(ふるさと)」は今でも日本人の心の原風景か?

夕飯の準備をする妻は、鍋の蓋を開けたり閉めたり、まな板で包丁をトントンしたり、右に左にボクサーのようにキュッキュッと忙しなく動いている。 私はテーブルで、コンビニの安物ワインを手酌でグラスに注いで飲んでいる。ツマミはスーパーの惣菜で買ってき…

うちの子が「うっせぇわ」に影響されて困っています

某市、某中学校で保護者面談がおこなわれた。 「先生、最近うちの娘と全然会話にならないんです。何を言っても「うっせぇうっせぇ」で、取り付く島がないんです。しかも妙なフシがついてるんです。前はこんなんじゃなかったのに。ほんと素直で良い子だったん…