Jポップの日本語

流行歌の歌詞について

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

女が歌う男の「生き方」

0 感傷的な歌詞の中にふと〈生き方〉という言葉が挟まれると、そこだけすっと背筋が伸びた感じになる。歌詞が引き締まる。〈生き方〉という言葉が、文脈からはずれて不意に出てきたときは軽い驚きを生む。私にとってそういう感じにさせる歌は二つある。 1-1 …

浜崎あゆみの技法

以下は20年前に書いた原稿。 歌詞をこま切れにする 二〇〇二年一月一日発売のアルバム『I am...』までで浜崎あゆみが作詞した歌は六〇曲近くになる。その全てに目を通すと、よく似た言葉が何回も使用されていることがわかる。語や句のレベルばかりでなく、…

浜崎あゆみ~共感はどこまで可能か

浜崎あゆみの自伝的ドラマ『M』が今夜、テレビ朝日で放送される。 以下は20年前に書いた原稿。 庶民と貴族 二〇〇一年三月二八日、浜崎あゆみと宇多田ヒカルの大物二人が同日にアルバムを発売した。この平成の歌姫決戦とも言われた戦争での勝者は宇多田ヒカ…

「竈門炭治郎のうた」にみる運命論

1 『鬼滅の刃』アニメ版は、非常に手をかけて緻密に作られた作品で、特に「第19話」はシリーズの中で一番盛り上がるように作られている。 映像的に称賛されている回であるが、激闘シーンが最終局面に差しかかったところで流れる「竈門炭治郎のうた」は強い印…

志村けんと「東村山音頭」

1 「東村山」の中には志村の名前が隠されている。〈ひがしむらやま~〉と歌うとき、志村は自分の名前を呼んでいることになる。 この歌が流行ったとき私は小学六年生だったが、東村山がどこにあるのか知らなかったし、架空の地名なのかもしれないと思っていた…