Jポップの日本語

流行歌の歌詞について

ホステス探しもの−−尋ね人ソング

0 水商売の女性を歌った歌は多いが、今回はその中でも、ある分野に絞って考察してみたい。 「ホステス探しもの」とでも呼ぶべき種類の歌がある。水商売の女性に惚れてその人が店を変えるあとを追いかけたり、あるいは水商売に「身を落とした」知り合いの女性…

逃げることはかっこいい−−ラナウェイソング

0 一九七九年から一九八〇年にかけて、〈ラナウェイ〉と歌う歌がいくつかあった。 最初はクリスタルキング「大都会」(作詞、田中昌之、一九七九年)で、ハイトーンボイスが珍しがられて大ヒット。〈Run Away Run Away 今 駆けてゆく〉と歌われた。次がシャ…

女が歌う男の「生き方」

0 感傷的な歌詞の中にふと〈生き方〉という言葉が挟まれると、そこだけすっと背筋が伸びた感じになる。歌詞が引き締まる。〈生き方〉という言葉が、文脈からはずれて不意に出てきたときは軽い驚きを生む。私にとってそういう感じにさせる歌は二つある。 1-1 …

浜崎あゆみの技法

以下は20年前に書いた原稿。 歌詞をこま切れにする 二〇〇二年一月一日発売のアルバム『I am...』までで浜崎あゆみが作詞した歌は六〇曲近くになる。その全てに目を通すと、よく似た言葉が何回も使用されていることがわかる。語や句のレベルばかりでなく、…

浜崎あゆみ~共感はどこまで可能か

浜崎あゆみの自伝的ドラマ『M』が今夜、テレビ朝日で放送される。 以下は20年前に書いた原稿。 庶民と貴族 二〇〇一年三月二八日、浜崎あゆみと宇多田ヒカルの大物二人が同日にアルバムを発売した。この平成の歌姫決戦とも言われた戦争での勝者は宇多田ヒカ…

「竈門炭治郎のうた」にみる運命論

1 『鬼滅の刃』アニメ版は、非常に手をかけて緻密に作られた作品で、特に「第19話」はシリーズの中で一番盛り上がるように作られている。 映像的に称賛されている回であるが、激闘シーンが最終局面に差しかかったところで流れる「竈門炭治郎のうた」は強い印…

志村けんと「東村山音頭」

1 「東村山」の中には志村の名前が隠されている。〈ひがしむらやま~〉と歌うとき、志村は自分の名前を呼んでいることになる。 この歌が流行ったとき私は小学六年生だったが、東村山がどこにあるのか知らなかったし、架空の地名なのかもしれないと思っていた…

比喩一発ソング

カラオケでよく歌われる歌の一つに中島みゆきの「糸」(作詞、中島みゆき、一九九二年)がある。しんみりした歌で七〇年代っぽい感じがするが、その素朴さゆえに人気がある。カバーするアーティストも多く、映画化もされ、まもなく公開される。 普通、歌で「…

野口五郎vs.松本隆

1-1 野口五郎の時代というのが確かにあった。私にとってそれは、「むさし野詩人」「沈黙」「季節風」「風の駅」がリリースされた一九七七年である。その頃は中学一、二年の多感な時期で、野口五郎の歌はお子様が聞いてもいいアイドル歌謡のはずなのに、歌詞…

謎解き「山口さんちのツトム君」

0 フォークシンガーみなみらんぼうが作詞作曲した「山口さんちのツトム君」はNHK「みんなのうた」で流れて大ヒットした。一九七六年のことである。いろんな歌手がレコードを出しており、売上累計は一五〇万枚だという。(https://www.news-postseven.com/…

アニメソング(ロボットアニメ編)

0 ネットフリックスで『機動戦士ガンダム』を通して見直した。もう2,3回見ているはずだが、「あれ?こんな話だったっけ?」と思うところが多々あった。Gアーマーが結構活躍していたり、後半はジオンはモビルスーツよりモビルアーマーが主体になったりとか…

自殺ソング

0 日本での自殺者数は年齢別で五、六〇代をピークに上昇してゆく。大人が自殺するのは、病気を苦にしたりリストラされて仕事がないといった経済的な理由であることが多い。中高生の場合は、いじめなど学校での人間関係や、虐待など家庭での親子関係に問題が…

スキーマソング

0 「スキーマschema」というのは、人がものをとらえる際の認知の枠組みのことである。認知心理学ではスキーマといい、発達心理学では「シェマschema」というが、同じことである。似た言葉でビジネスでよく使う「スキームscheme」がある。これは計画というほ…

アスコンソング

0 我が家の二匹の猫は、やわらかくて、ふわふわしていて、暖かいものにくるまれているのが大好きである。つまりは羽毛布団の上で、そこにぱふっと埋もれている。家の外に出ず、固いところを歩かないから、足裏の肉球は何年たってもぷにぷにのままである。も…

応援ソング〜女性編

0 何かを応援する人が増えたように思う。スポーツの応援はサッカー人気でサポーターという言葉が定着したし、阪神淡路大震災は多くの人がボランティアに駆けつけボランティア元年と呼ばれた。SNSの普及で応援してますというメッセージも発信しやすくなっ…

野球ソング

0 平成の時代、野球とサッカーの人気は逆転した。サッカーの競技人口は増え、野球のそれは減った。特に子供がそうだ。テレビの中継も、かつてはシーズン中は野球一色だったが今はバラエティ番組に置き換わっている。このままだと野球は消滅するのではないか…

ピンク・レディー「UFO」・・・〈それでもいいわ〉という生存戦略

0 阿久悠の作詞家稼業のなかでピンク・レディーは最重要の位置を占める。阿久悠が作詞したシングル・レコードの売り上げベストテンのうち五曲はピンク・レディーの曲なのだ。一位「UFO」一五五万枚、二位「サウスポー」一四六万枚、四位「ウォンテッド」…

バスの歌

0 私は子供の頃、乗り物酔いしやすい体質で、特にバスが駄目だった。バスに乗って吐いたことは何回かある。バスに近づいたときの排気ガスの匂いや、車内に入ったときの振動や匂いでもう気分が悪くなり、走り出してカーブを曲がると胃のあたりがムカムカした…

山口百恵「プレイバック part2」

0 今年出版された山口百恵の本『時間(とき)の花束 Bouquet du temps』が売れている。内容は自作のキルト作品集で、今の自分を直接晒すものではない。息子の三浦祐太朗もテレビなどに出演し、母親を語ることがあるが、その穏やかな話しぶりや周囲の出演者の反…

自動車ソング

0 作詞家としてヒット曲を量産した松本隆の歌には乗り物がよく登場する。ちょっと思いついただけでも……〈恋人よ 僕は旅立つ/東へと 向かう列車で〉(太田裕美「木綿のハンカチーフ」一九七五年)、〈からし色のシャツ追いながら/とびのった電車のドア〉(…

字解ソング

0 「抜け始めてわかる 髪は長~い友だち」という脱毛予防薬(カロヤン)のCMがあった(一九七八年)。これで「髪」という漢字を覚えた人も多いだろう。また、漢字の話になるとよく引用される三好達治の「郷愁」という詩には、「海よ、僕らの使ふ文字では、お…

オノマトペソング

1 「子連れ狼」 日本語では擬音語、擬態語などというところを総称してオノマトペと言う。歌に出てくるオノマトペでユニークなのは、なんといっても橋幸夫の「子連れ狼」(作詞、小池一雄、一九七一年)であろう。作詞者が劇画の原作者だからだろうか、オノ…